5月28日(7)[1/2] 本編
2017年 05月 28日
皆様、お早う御座います!
作者が無計画なせいで、なんかダラダラと続いてしまったF系物語シリーズも、
今回でいよいよ終了です。というか、F系は今後「○〇編」とか、
各シリーズ毎に名前を付けた方が良さそうです。今後自分の記事内で
F系の過去の話題を出す際、何か説明が面倒になりそうですので(苦笑)。
今回も例に拠って2分割です。まず本編、その後今回使った加工の解説と
続きます。それではまず本編続きをお楽しみ下さいませ。
─── ─ ───
東の竜人から錘の魔法具を譲り受けた女刺客は、銀髪エルフの予言通り現れた
「今日2つ目」の来客たちと今対峙していた ─。
さぁて。
面倒臭ぇし、有無を言わさず全員まとめてブッ飛ばしてぇ気分だが、
そうもいかんか。
今からここに来るのは、皆お前を消しに来る連中だ。信じられぬと言うなら、
何かしら方法を考えて、自ら確認してみるが良かろう。
万一面が割れては困るので、余程の事でもない限り我らは手を貸せぬが、
連中をどう料理するかは全てお前に任せるとしよう。が、ただ一つ。
必ず一人は逃がして帰せ。
そうすれば蒼月が密かに後を追い、今回の黒幕に繋がる糸を見つけ出す。
何ならそれが誰なのか、後で教えてやっても良い。
(そうだな、一応確認だけはしておくか...)
おぉっ、何だ!?もしかしてお前ら助太刀に来てくれたのかよ?
だが悪いな、この通り無様に負けちまって、奴ももうここには居ねぇ!
(...なるほど。アタシが負けたと聞いても奴を追おうとしねぇ。
しかも帰るそぶりも見せず、こうしてアタシに対する囲いを解かない...。
つまり、勝っても負けても、最初から口封じの段取りは出来てた訳か。)
やれやれ、甘い儲け話に飛びついた挙句に、こりゃ相当面倒な事に首を
突っ込んじまったようだ。見た所、金次第で平気で人を襲うゴロツキ共の
寄せ集め、例え捉えて傷め付けた所で、こいつらは何も知らねぇし興味も
ねぇか。...だがまぁ、そういう事ならアタシも遠慮は要らねぇな!
...大丈夫なのでしょうか?
心配要らぬ。奴が強いか弱いは知らぬが、イザと言う時の為に赫陽を残しておく。
それより我はこれから銀髪を追い、奴がどこへ向かうかを見定める。
こちらは任せたぞ、蒼月。
ハッ。
...心配するな。この一件が片付き次第、ひとまずは皆で郷里へ戻るとしよう。
どうせ親父から「あの放蕩娘を連れ帰るまで、ここに戻って来る事まかりならん」
とでも言われて来たのであろう?
...お察しの通りに御座います。
別にあのクソ親父の戯言を聞いてやる義理もないが、いつまでも我が帰らぬとあれば、
郷里でお前たち一族の体面に傷が付こう。何より、永きに渡り無心でこの我の為に
仕えてくれた、お主ら姉妹の面子を潰す事など出来はせぬ。...まぁどうせ、あの腹心
のタヌキ親父辺りが、そこを見越してわざわざお前を寄こさせたのであろうがな。
お心遣い痛み入ります、姫様。
─── ─ ───
おーい、終わったぞー!
つか、まだ誰か居んのー?
あっ、居た。
いやぁ~、お姉さんすっごく強いんだね!あっと言う間だったよ!!
私、何か感動しちゃった。
なに、別にそんな大した事じゃねぇさ。
よっと。
あ、でも私が一番驚いたのは頭の良さかな?
えっ?
大人数相手でも囲まれないように常に考えて動きつつ、一番良いポジションから
攻撃しようとしてたでしょ?
もう何か、戦い慣れてるーって言うか、これぞプロ!って言うかさ...。
いや、まぁその辺は何つぅの?長年の経験?みたいな?アハハ...。
おぉー、こうして見ると壮観だね。
あぁ、それにアタシが分かるだけでも2人、賞金首が混じってた。
2人合わせても恐らく酒代半月分ぐらいにしかならねぇザコ共だが、
今回儲けそこなった埋め合わせに、ソイツらの分は有り難く頂いておくとするさ。
ねっ、気に入ってくれた、そのハンマー?
あぁ、ザコはともかく、あのデカブツのオーガを一発で仕留められたのは、
間違いなくコイツのお陰だ。世辞でも大袈裟でもなく、コイツは今までアタシが
使ったハンマーの中でも最高の逸品だ!
...しかしこれは後片付けが大変だ。さて、どう段取りしようか?
逃げた女魔導士は?
こいつらゴロツキ共はともかく、アイツなら何か知ってそうだったんで逃がしたが。
それは蒼月お姉ちゃんに任せておけば万事OKだよ。
あっ、そう言えば、変なお爺さんが居たけど?
え?そうなの?
うん。事前に蒼月お姉ちゃんが見つけてたんだけど、姫様は「捨て置け」って。
一応蒼月お姉ちゃんからは、邪魔する様なら...って言われてたけど、お姉さんが
一度だけ後ろを取られて襲われそうになった時、緑のタコみたいなニュルニュル?
それを投げ付けて助けてたから、てっきり味方なのかと思ってた。違うの?
...ははぁん。そいつはまだ居るのか?
うん、後ろに。
おいっ、ジジイ!別に隠れてなくても良いんだぜ!
色々言いたい事はあるけどもよ、助けてくれたっつぅんなら、敵前逃亡した件
はギルドに黙っておいてやらぁ。それでこの先仕事を干される心配は無くなる
だろう?じゃあな、あばよ!
何だ、まだ何かあんのかよ?賞金首の分け前ならやらねぇぞ?
そんなモンはどうでも良いんじゃ。そ、それっ、そのハンマーじゃ!
遠目で見ておったが、あの緑の御仁から授かったのじゃろう!?
あのお方も、さっきの銀髪の騎士と同じ竜人様なのか?
いや、まぁそうみたいだけど...。
そのハンマーは魔化重錘(まかじゅうすい)と言うてな、対となるもう1本
の錘と合わせても、この世に1本づつ、計2本しかない幻の魔道具に違いない!
...へぇ、そうか。アイツそんな凄い物をくれたんだな。気前良いじゃん。
ワシも欲しいぞっ!
いや、今自分でこの世に1本しかねぇって...
違う!錘ではなく杖がじゃ!ワシも竜人様から凄い杖を授かりたいのじゃ!
無理だろ?
何故じゃ!?
いや、何故じゃって。お前何にもしてねぇじゃんかよ?
アハハッ、何、このお爺さん面白い!
...う~ん、そうだねぇ。約束は出来ないけど、姫様の為に一生懸命働いたら、
もしかすると ─
ほ、本当かっ!!
じゃあ急いで街に帰って、自警団に「街外れで人が魔獣に襲われてるのを見た」
って伝えて来て? それで、自分は急いで逃げて来たから、詳しい事は
何も知らない、分からないって。それらしく見せるのは今から私がやるから。
分かった。
あとね、姫様に気に入って欲しかったら、絶対に姫様の目の前で竜の呪いを
持つ人を虐げたり、馬鹿にしたりしないで。そして反対に、姫様や竜の呪いを
受けた人たちを、竜の化身様とか、竜人様とか言って奉ったりもしないで。
本当に普通の人間と同じように接して欲しいの。...出来る?
では、行ってくるぞいっ!!
おい、良いのか?主の了解も得ないで口約束しちまってさ。
テメェが貰っておいて言うのも何だがよ、魔道具なんてそう易々と他人に
やれる物でも無いんだろ?
さぁ?でも魔道具と言ってもピンからキリまで有るし。しつこかったり、
使えないようなら、そこらの杖に毛が生えた程度の杖を渡して追い払うかも。
ヒデェな。
でも、ちゃんと真面目に働いてくれる人には必ず報いようとする人だよ?
喋り方とか態度がぶっきらぼうなせいで良く誤解されるけど、本当は凄く
義理堅くて優しい人よ、姫様は。
まぁお前さんと姫様がそれで良いんなら、アタシが...えっ!?
姫様ぁ!? アイツ、いやあの人、じゃない、あの方はお姫様なの!?
そうだよ?と言っても、ここから遠い遠い東の果ての小さな国の、
だけどね。旅に出た最初の頃は、何回も姫様って呼ばないようにって
言われたんだけど、小さい頃からの習慣と、あと私がバカだから?
今はもう諦めたみたい、アハハ。
(...と言うか、今頃そこに驚くんだ、この人)
─ 姫様はね、きっと世界で二番目に可哀そうな竜呪を持ったお姫様なの。
東の果ての小国で、ずっと一人きりでそんな自分の運命と闘って来たの。
だけどある日、西から来たとある異国の商人の一行から、自分と同じ...
いいえ、自分よりもっともっと過酷な運命を背負って生きている、
ある竜の呪いを背負ったお姫様の話を聞いてしまったの。
その話を聞いて姫様は言ったわ。「どうやら世界で一番不幸な姫は、自分では
なかったらしい」って。
姫様はずっと、竜の呪いを受けた人たちが差別されたり、逆に普通の人々を
平気で苦しめたりする今の世界をどうにかしたいと思っていたの。
だから、同じように自分の運命と闘っている、もう一人の姫の事を知ってからは、
もう小さな国の中でじっとしては居られなかった。そのもう一人の姫に会う為に、
姫様は周囲の人に笑われても反対されても、自分を信じて旅に出る事に決めたの。
...それで、そのもう一人の姫様って奴には会えたのか?
...会えたわ。でも、一緒に闘う事は出来ないって。
それどころか、もし自分の邪魔をする様なら容赦しないとまで言われたの。
そうかい、そりゃあ...。
悲しいね、世界って。いえ、世界そのものが悲しいんじゃない。
こんなにもたくさんの人が居て、それなのに分かり合ったり許し合ったり
出来ない事が悲しいの。
世界で一番悲しいお姫様と、世界で二番目に悲しいお姫様が
一緒に手を取り合って頑張ったら、きっときっと、世界は今より良くなる
と思ったのに...
(あれっ、泣いちゃうんだ?)
これじゃあ何もかも投げ出して、苦労して旅をして来た姫様が、
あんまりにも可哀そうだよ...グスン
うわあぁぁ~ん‼ 姫さまぁー!
えーっ? ちょ、えぇ~っ!?(どうすんのコレ)
おい、姉ちゃんか姫さん、どっか居ねぇのかよ!?おぉーい!!
── 様々な人々との運命の糸を、紡ぎ、断ち切り、絡ませながら、
2人の竜人のそれぞれの旅路は、この先なおも続いて行く。
作者が無計画なせいで、なんかダラダラと続いてしまったF系物語シリーズも、
今回でいよいよ終了です。というか、F系は今後「○〇編」とか、
各シリーズ毎に名前を付けた方が良さそうです。今後自分の記事内で
F系の過去の話題を出す際、何か説明が面倒になりそうですので(苦笑)。
今回も例に拠って2分割です。まず本編、その後今回使った加工の解説と
続きます。それではまず本編続きをお楽しみ下さいませ。
─── ─ ───
東の竜人から錘の魔法具を譲り受けた女刺客は、銀髪エルフの予言通り現れた
「今日2つ目」の来客たちと今対峙していた ─。
さぁて。
面倒臭ぇし、有無を言わさず全員まとめてブッ飛ばしてぇ気分だが、
そうもいかんか。
今からここに来るのは、皆お前を消しに来る連中だ。信じられぬと言うなら、
何かしら方法を考えて、自ら確認してみるが良かろう。
万一面が割れては困るので、余程の事でもない限り我らは手を貸せぬが、
連中をどう料理するかは全てお前に任せるとしよう。が、ただ一つ。
必ず一人は逃がして帰せ。
そうすれば蒼月が密かに後を追い、今回の黒幕に繋がる糸を見つけ出す。
何ならそれが誰なのか、後で教えてやっても良い。
(そうだな、一応確認だけはしておくか...)
おぉっ、何だ!?もしかしてお前ら助太刀に来てくれたのかよ?
だが悪いな、この通り無様に負けちまって、奴ももうここには居ねぇ!
(...なるほど。アタシが負けたと聞いても奴を追おうとしねぇ。
しかも帰るそぶりも見せず、こうしてアタシに対する囲いを解かない...。
つまり、勝っても負けても、最初から口封じの段取りは出来てた訳か。)
やれやれ、甘い儲け話に飛びついた挙句に、こりゃ相当面倒な事に首を
突っ込んじまったようだ。見た所、金次第で平気で人を襲うゴロツキ共の
寄せ集め、例え捉えて傷め付けた所で、こいつらは何も知らねぇし興味も
ねぇか。...だがまぁ、そういう事ならアタシも遠慮は要らねぇな!
...大丈夫なのでしょうか?
心配要らぬ。奴が強いか弱いは知らぬが、イザと言う時の為に赫陽を残しておく。
それより我はこれから銀髪を追い、奴がどこへ向かうかを見定める。
こちらは任せたぞ、蒼月。
ハッ。
...心配するな。この一件が片付き次第、ひとまずは皆で郷里へ戻るとしよう。
どうせ親父から「あの放蕩娘を連れ帰るまで、ここに戻って来る事まかりならん」
とでも言われて来たのであろう?
...お察しの通りに御座います。
別にあのクソ親父の戯言を聞いてやる義理もないが、いつまでも我が帰らぬとあれば、
郷里でお前たち一族の体面に傷が付こう。何より、永きに渡り無心でこの我の為に
仕えてくれた、お主ら姉妹の面子を潰す事など出来はせぬ。...まぁどうせ、あの腹心
のタヌキ親父辺りが、そこを見越してわざわざお前を寄こさせたのであろうがな。
お心遣い痛み入ります、姫様。
─── ─ ───
おーい、終わったぞー!
つか、まだ誰か居んのー?
あっ、居た。
いやぁ~、お姉さんすっごく強いんだね!あっと言う間だったよ!!
私、何か感動しちゃった。
なに、別にそんな大した事じゃねぇさ。
よっと。
あ、でも私が一番驚いたのは頭の良さかな?
えっ?
大人数相手でも囲まれないように常に考えて動きつつ、一番良いポジションから
攻撃しようとしてたでしょ?
もう何か、戦い慣れてるーって言うか、これぞプロ!って言うかさ...。
いや、まぁその辺は何つぅの?長年の経験?みたいな?アハハ...。
おぉー、こうして見ると壮観だね。
あぁ、それにアタシが分かるだけでも2人、賞金首が混じってた。
2人合わせても恐らく酒代半月分ぐらいにしかならねぇザコ共だが、
今回儲けそこなった埋め合わせに、ソイツらの分は有り難く頂いておくとするさ。
ねっ、気に入ってくれた、そのハンマー?
あぁ、ザコはともかく、あのデカブツのオーガを一発で仕留められたのは、
間違いなくコイツのお陰だ。世辞でも大袈裟でもなく、コイツは今までアタシが
使ったハンマーの中でも最高の逸品だ!
...しかしこれは後片付けが大変だ。さて、どう段取りしようか?
逃げた女魔導士は?
こいつらゴロツキ共はともかく、アイツなら何か知ってそうだったんで逃がしたが。
それは蒼月お姉ちゃんに任せておけば万事OKだよ。
あっ、そう言えば、変なお爺さんが居たけど?
え?そうなの?
うん。事前に蒼月お姉ちゃんが見つけてたんだけど、姫様は「捨て置け」って。
一応蒼月お姉ちゃんからは、邪魔する様なら...って言われてたけど、お姉さんが
一度だけ後ろを取られて襲われそうになった時、緑のタコみたいなニュルニュル?
それを投げ付けて助けてたから、てっきり味方なのかと思ってた。違うの?
...ははぁん。そいつはまだ居るのか?
うん、後ろに。
おいっ、ジジイ!別に隠れてなくても良いんだぜ!
色々言いたい事はあるけどもよ、助けてくれたっつぅんなら、敵前逃亡した件
はギルドに黙っておいてやらぁ。それでこの先仕事を干される心配は無くなる
だろう?じゃあな、あばよ!
何だ、まだ何かあんのかよ?賞金首の分け前ならやらねぇぞ?
そんなモンはどうでも良いんじゃ。そ、それっ、そのハンマーじゃ!
遠目で見ておったが、あの緑の御仁から授かったのじゃろう!?
あのお方も、さっきの銀髪の騎士と同じ竜人様なのか?
いや、まぁそうみたいだけど...。
そのハンマーは魔化重錘(まかじゅうすい)と言うてな、対となるもう1本
の錘と合わせても、この世に1本づつ、計2本しかない幻の魔道具に違いない!
...へぇ、そうか。アイツそんな凄い物をくれたんだな。気前良いじゃん。
ワシも欲しいぞっ!
いや、今自分でこの世に1本しかねぇって...
違う!錘ではなく杖がじゃ!ワシも竜人様から凄い杖を授かりたいのじゃ!
無理だろ?
何故じゃ!?
いや、何故じゃって。お前何にもしてねぇじゃんかよ?
アハハッ、何、このお爺さん面白い!
...う~ん、そうだねぇ。約束は出来ないけど、姫様の為に一生懸命働いたら、
もしかすると ─
ほ、本当かっ!!
じゃあ急いで街に帰って、自警団に「街外れで人が魔獣に襲われてるのを見た」
って伝えて来て? それで、自分は急いで逃げて来たから、詳しい事は
何も知らない、分からないって。それらしく見せるのは今から私がやるから。
分かった。
あとね、姫様に気に入って欲しかったら、絶対に姫様の目の前で竜の呪いを
持つ人を虐げたり、馬鹿にしたりしないで。そして反対に、姫様や竜の呪いを
受けた人たちを、竜の化身様とか、竜人様とか言って奉ったりもしないで。
本当に普通の人間と同じように接して欲しいの。...出来る?
では、行ってくるぞいっ!!
おい、良いのか?主の了解も得ないで口約束しちまってさ。
テメェが貰っておいて言うのも何だがよ、魔道具なんてそう易々と他人に
やれる物でも無いんだろ?
さぁ?でも魔道具と言ってもピンからキリまで有るし。しつこかったり、
使えないようなら、そこらの杖に毛が生えた程度の杖を渡して追い払うかも。
ヒデェな。
でも、ちゃんと真面目に働いてくれる人には必ず報いようとする人だよ?
喋り方とか態度がぶっきらぼうなせいで良く誤解されるけど、本当は凄く
義理堅くて優しい人よ、姫様は。
まぁお前さんと姫様がそれで良いんなら、アタシが...えっ!?
姫様ぁ!? アイツ、いやあの人、じゃない、あの方はお姫様なの!?
そうだよ?と言っても、ここから遠い遠い東の果ての小さな国の、
だけどね。旅に出た最初の頃は、何回も姫様って呼ばないようにって
言われたんだけど、小さい頃からの習慣と、あと私がバカだから?
今はもう諦めたみたい、アハハ。
(...と言うか、今頃そこに驚くんだ、この人)
─ 姫様はね、きっと世界で二番目に可哀そうな竜呪を持ったお姫様なの。
東の果ての小国で、ずっと一人きりでそんな自分の運命と闘って来たの。
だけどある日、西から来たとある異国の商人の一行から、自分と同じ...
いいえ、自分よりもっともっと過酷な運命を背負って生きている、
ある竜の呪いを背負ったお姫様の話を聞いてしまったの。
その話を聞いて姫様は言ったわ。「どうやら世界で一番不幸な姫は、自分では
なかったらしい」って。
姫様はずっと、竜の呪いを受けた人たちが差別されたり、逆に普通の人々を
平気で苦しめたりする今の世界をどうにかしたいと思っていたの。
だから、同じように自分の運命と闘っている、もう一人の姫の事を知ってからは、
もう小さな国の中でじっとしては居られなかった。そのもう一人の姫に会う為に、
姫様は周囲の人に笑われても反対されても、自分を信じて旅に出る事に決めたの。
...それで、そのもう一人の姫様って奴には会えたのか?
...会えたわ。でも、一緒に闘う事は出来ないって。
それどころか、もし自分の邪魔をする様なら容赦しないとまで言われたの。
そうかい、そりゃあ...。
悲しいね、世界って。いえ、世界そのものが悲しいんじゃない。
こんなにもたくさんの人が居て、それなのに分かり合ったり許し合ったり
出来ない事が悲しいの。
世界で一番悲しいお姫様と、世界で二番目に悲しいお姫様が
一緒に手を取り合って頑張ったら、きっときっと、世界は今より良くなる
と思ったのに...
(あれっ、泣いちゃうんだ?)
これじゃあ何もかも投げ出して、苦労して旅をして来た姫様が、
あんまりにも可哀そうだよ...グスン
うわあぁぁ~ん‼ 姫さまぁー!
えーっ? ちょ、えぇ~っ!?(どうすんのコレ)
おい、姉ちゃんか姫さん、どっか居ねぇのかよ!?おぉーい!!
── 様々な人々との運命の糸を、紡ぎ、断ち切り、絡ませながら、
2人の竜人のそれぞれの旅路は、この先なおも続いて行く。
by moriguchi01
| 2017-05-28 07:44
| SS公開